Design the Joy of Thinking Through Play 遊びながら、考える力をデザインする
「勉強する」と「遊ぶ」。その境界をなくすことができたら、学ぶことはもっと自由に、もっと夢中になれる。学校図書との共同プロジェクトとして、立ち上げから携わった算数ボードゲーム「NINE BREAK(ナインブレイク)」。TIDE DESIGNでは、ゲームそのものの整理・検証から、キャッチコピー、ロゴマーク、パッケージ、盤面、駒のデザイン、印刷・製造工程のディレクションまで、プロダクト全体のアートディレクション&デザインを担当しました。
NINE BREAKは、数字が書かれた駒を使い、計算しながら相手の駒をひっくり返していく対戦型ボードゲームです。ルールはシンプルですが、勝つためには計算する力だけでなく、「次に相手はどう動くのか」「その次に自分はどうするのか」と先を読む力が必要になります。小学校低学年から高学年、そして大人まで、年齢を超えて一緒に楽しめることも、このゲームの大きな魅力です。
プロジェクトで大切にしたのは、単にゲームをきれいにデザインすることではありませんでした。まず取り組んだのは、ゲームの面白さを誰もが直感的に理解できるように整理すること。初めて箱を開けた子どもでも迷わず遊び始められるよう、複雑になりがちなルールを一つひとつ検証し、言葉、図解、情報の順序を整理。「読まなければ遊べない説明書」ではなく、「見れば遊びたくなるルール」を目指し、グラフィックと文章の両面からコミュニケーションを設計しました。
パッケージでは、「算数教材だから真面目に」という固定観念から離れ、書店に並んだときにも一つのボードゲームとして存在感を持つデザインを追求しました。子どもが「やってみたい」と手を伸ばし、大人も「ちょっと面白そう」と感じること。教育とエンターテインメント、そのどちらかに偏るのではなく、両者が自然に共存する佇まいを目指しています。
ロゴマークのベースには、1969年にジョー・タイラー氏がデザインしたバウハウスの影響を感じさせる太く幾何学的な欧文サンセリフ書体「Blippo」をベースフォントに作成しました。数字を扱うゲームならではの幾何学的な構造とポップが同居した楽しさを重ね、NINE BREAK独自のアイデンティティへと展開しました。その世界観をパッケージだけでなく、盤面や数字の駒、ルールブックなど、細部まで一貫させています。
さらに、デザインデータを完成させて終わりではありません。パッケージの構造や素材、紙、色の再現性、盤面や駒との組み合わせなど、実際に商品として手に取ったときの質感まで確認するため、印刷所での印刷立ち会いにも参加。モニター上のデザインを「製品」として成立させるところまで、細かな調整を重ねました。子どもたちが繰り返し触れるものだからこそ、見た目だけではなく、使いやすさや耐久性、手にしたときの楽しさまで含めてデザインしています。
こうして生まれたNINE BREAKは、学校教育の現場でも活用され、小学校の算数の授業を通して、子どもたちが楽しみながら計算や思考に触れる機会へとつながっていきました。そして活動の場は教室だけにとどまらず、書店の教育・知育関連のボードゲームコーナーなどへも広がり、学校教材から家庭で親子が楽しめるゲームへと成長していきます。「勉強しなさい」と言われなくても、夢中になって数字を考えている。勝ちたいから計算する。負けたら、もう一度考える。そして自然に「もう一回!」が生まれる。
デザインができることは、答えを教えることだけではありません。人が自ら考えたくなるきっかけをつくり、学ぶことへの気持ちそのものを変えることもできる。NINE BREAKは、企画、ルール、グラフィック、プロダクト、印刷、そして実際に使われる体験までを一つにつなぎ、「遊ぶ」と「学ぶ」の新しい関係をデザインしたプロジェクトです。









