Only One, No Fake. ラップで撃つ、模倣品。若者へ届けた啓発プロジェクト
「模倣品は犯罪につながる。」その事実を、法律や制度の説明だけで若い世代へ届けることは決して簡単ではありません。スマートフォンひとつで世界中の商品が購入できる時代。SNS広告や海外ECサイトの普及によって、コピー品や偽ブランド品は、知らないうちに誰もが手にしてしまうほど身近な存在となりました。しかし、その裏側には知的財産権の侵害、犯罪組織への資金流入、そして購入者自身が法的責任を問われる可能性など、多くの社会的リスクが潜んでいます。
財務省が管轄する税関では、こうした模倣品の流入を防ぐため、日々水際での取り締まりを行っています。しかし、本当に防ぐべきなのは「持ち込まれる瞬間」だけではなく、「購入しようとする意識」そのものです。タイドデザインは、この社会課題に対して、従来の行政広報とは異なるアプローチを提案しました。目指したのは、”教える”ことではなく、”興味を持ってもらう”こと。法律用語や難しい解説、数字やグラフによる説明をできる限り排除し、若い世代が自ら最後まで見たくなるコミュニケーションへと再設計しました。
そこで生まれたのが、税関の公式キャラクター「カスタムくん」と、模倣品を象徴する「ぱちドッグ」が繰り広げるラップバトルアニメーション『オンリーわん!ラップバトル』です。リズムに乗せた言葉は、難しい説明よりも直感的に心へ届く。 耳に残るフレーズは、気づきを記憶へ変えていく。ヒップホップカルチャーが持つテンポ、ユーモア、メッセージ性を活かしながら、「安いから」「簡単だから」という何気ない購買行動の先にある社会的影響を、エンターテインメントとして自然に理解できるストーリーへと昇華しました。
タイドデザインは、本プロジェクトにおいて企画構成からコンセプト設計、ストーリー制作、アートディレクション、キャラクター演出、アニメーションデザイン、Webサイトデザインまでを一貫して担当。動画と特設サイトを連動させることで、一過性の視聴体験では終わらず、より深い理解へ導くコミュニケーションデザインを構築しました。サイトでは映像の世界観をそのまま継承し、イラストやモーショングラフィックを多用。複雑な法律や制度も、イラストレーションやキャラクターとの対話を通して直感的に理解できる構成とし、「行政サイトだから難しい」という心理的ハードルを取り払いました。
スクロールするたびに物語が展開するような設計により、学ぶことそのものを体験へと変換しています。細部にまでこだわったのは、「正しさ」よりも「伝わること」。色彩設計、タイポグラフィ、テンポ、アニメーション、音楽、言葉選び、そのすべてを統合し、若年層の感覚に寄り添う新しい行政コミュニケーションを目指しました。その結果、動画はYouTubeで34万回を超える再生を記録。行政機関による啓発コンテンツとしては異例の反響を生み、社会性とエンターテインメント性を高い次元で両立したプロジェクトとして、多方面から評価をいただきました。
私たちは、デザインとは美しく整えることではなく、「伝わらない」を「伝わる」へ翻訳する力だと考えています。社会課題を時代のカルチャーと言葉へ置き換え、人の感情を動かし、自ら考え、行動したくなる体験をつくること。『オンリーわん!ラップバトル』は、その挑戦の一つです。
デザインは、人の意識を変えることができる。
そして、その小さな意識の変化が、社会を少しずつより良い方向へ動かしていく。タイドデザインはこれからも、行政と生活者、制度と感情、その間にある距離をデザインの力でつなぎ、社会に新しいコミュニケーションの価値を生み出していきます。
取り締まるぜ!オンリー「わんっ!」ラップバトル
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